カッターナイフと娘たち。改訂版

高校時代に書いた「カッターナイフと娘たち。」という台本を、2003年にタイトルそのままにまるきり別物に書き換えたものです。

以下、当時のテキスト、ママです。

 

私的「カッターナイフと娘たち。」訂正版。

ってことで書いてみましたYO。

【登場人物】

紗絵  主人公かもしれない。天然系性格。間延びした口調(をなるべくあらわしたつもり)。背中にカバンを背負ってます。色々入ってます。
アキ  こっちも主人公かもしれない。ツッコミ系。早とちりが多い。実は出番の割に台詞が少ない。
警官A 名前は「安藤」サン。一応男という前提で書いてあるが女役にしても支障がなかったりする。口調は偉そうにした…つもり。最も台詞が少ないカモ。
警官B 名前はとくに決めていない。Aには「ヤス」と呼ばれている。一応男という前提で書いてあるが以下略。口調が芝居がかっている(芝居なのに)。そして実は一番の長台詞が…。

【場面的に】

公園。初夏?
途中で遊具の出てくるシーンが一番の課題。「というか無理」。そんなの作れるかぁッ!!
あと大道具はベンチくらいでしょうか。

【その他】

スポットが2人ほど必要。
音楽の指定が最初と最後くらいしか書いてないのは気にしないでください。ほかに思いつかず…。
ギャグシーンは意識的に書かなかったつもりなんですが、全体的なノリがギャグ。
あと前半の展開が速い気がします。うー。

【では始まり~。】

ホリゾント水色。
何となく爽やか系(?)の音楽。
紗絵、中央のベンチに座り、手に持ったナイフをいろいろな方向から見ている。
アキ、下手から出てきて、紗絵の前を通り過ぎる。が、途中立ち止まり、じっと紗絵を見る。

アキ あのー。

紗絵 なに?

アキ 何、してるんですか。

紗絵 え?

アキ ナイフなんかもって…。まさか、自殺!?(飛びのく)

爽やか系の音楽止まる。

紗絵 …は?

アキ ダメダメダメ、自殺なんてダメですよ!!

紗絵 まさか。私まだまだ未練あるし、死んだりしないよぉ。

アキ 自殺じゃない?…っていうと…。――――まさか、殺人!!??

紗絵 はい?

アキ うわぁぁぁぁ、人殺しぃぃぃぃ!!おまわりさーん!!!

アキ、上手へ。
紗絵、上手を覗き込む。

紗絵 何だろぉ、あのひと…。

紗絵、再び何事もなかったかのようにナイフを眺めている。
再度爽やか系の音楽流れ始める。

アキ、上手から戻ってくる。

アキ はぁ、はぁ…。全く、周りに家も店も交番も電話もないし、今日は携帯持ってないし…。
どうしよう…。

紗絵 あの。

アキ はいぃぃぃ!?(飛びのく)

紗絵 別に、私、人殺そうなんて思ってよお。

アキ えっ?…じゃあ、何?

紗絵 何っ、て。別に、何でもない。ただ、綺麗だなと思って見てただけ。

アキ 綺麗?ナイフが?

紗絵 これ、お姉ちゃんの形見だから。

アキ 形見って…亡くなったの?

紗絵 ううん、生きてるよ。

アキ は?

紗絵 でもお姉ちゃん、今ちょっとしばらく遠くへ行ってて。

アキ はぁ…。

紗絵 で、今日は約束の日なの。

アキ 約束の日?

紗絵 そう、この日が来てもお姉ちゃんが帰ってこなかったら、「このナイフを使うように」って。

アキ 使うって?

紗絵 つまり、自分を刺すってこと。

爽やか系音楽また止まる。

アキ (後ろへ引いて)自殺じゃないですか!

紗絵 いや、死ぬわけじゃなくて、お姉ちゃんに会いにいくの。

アキ 同じですよ!ちょ、ちょっと止め…。

紗絵 じゃぁ、行ってきま~す♪

紗絵、自分の肩の辺りを刺す。

アキ うわぁぁ、救急車ぁぁぁ!!

アキ、上手へ。
紗絵、ナイフを肩から離す。

紗絵 全く、勘違いの激しい人だなあ…。おもちゃなのに。(ナイフの先を押す、と、刃先だけ引っ込む仕組み)

紗絵またナイフを眺める。
アキ、しばらくして上手から戻ってくる。

アキ うわっ、死んでない!

紗絵 おもちゃだから。

アキ (くずれこむ)悪趣味な冗談は、止めください…。

紗絵 形見だなんて、ジョークにに決まってるじゃない。で、救急車呼んだのぉ?

アキ まだですけど…。じゃあ、さっきの話も、全部冗談?

紗絵 ううん、全部じゃないよ。お姉ちゃんが遠くへ行ってるのは本当。

アキ どこへ?

紗絵 どこだろう。わかんない。

アキ そんな適当な…。

紗絵 ねえ、それよりさ。あなた、名前なんていうの?

アキ 私?アキです。

紗絵 変な名前!!

アキ 変?そうですか…?

紗絵 私のお姉ちゃんの名前、もっとかっこいいんだよ!

アキ …というと。

紗絵 菫(すみれ)・アネモフラクティスコンシトゥス・エパティークプリムラファリノサ・門松って言うの。

アキ 長ッ!…で、あなたは?

紗絵 紗絵・門松。

アキ 何で姉妹でそんなに差があるんですか!?

紗絵 いいじゃん、なんでも。親の趣味でしょ。

アキ わけわかんないなぁ…。それにしても、さっきの形見っていうナイフは、そのお姉さんと何の関係もないんですか?

紗絵 あぁ、本当のはこっち。

紗絵、カッターナイフを取り出す。

アキ きゃあああ!?

紗絵 そんな驚く事ないじゃん。ほら、刃はないよ。

アキ 刃がなければカッターの意味ないじゃないですかぁ!

紗絵 違うの。これはお姉ちゃんが最後に買ってくれた大事なもの。

アキ 最後?

紗絵 うん…まあね。遠くへ行く前に、一緒に買ってくれたの。

アキ ふーん…。

紗絵 ねぇねぇ、そんなことより、ちょっと、こっちこっち。

紗絵、アキを手招き。アキ、紗絵に近寄る。
上手から警官A登場。

警官A おまわりさんだの救急車だの叫んでるヤツがいるって通報できてみたが…。
いたずらか?まったく…。

警官A、2人を見つける。
アキ、ちょうど紗絵にナイフを突きつけられた様な格好になっている。

警官A うわっ!そこの君、何してるッ!

アキ&紗絵 え?

警官A そのナイフを下ろしなさい!!

アキ えっ、あっ、これは別におもちゃで…。

紗絵 フフ、そう言われたとおりになるものですか!!

アキ は???

紗絵 それ以上近づくと、この子がどうなっても知らないよお?

アキ 何言ってるの、突然!

警官A 君っ、何をするつもりだ!

紗絵 ゆーかい♪

アキ&警官A 誘拐!?

紗絵 今すぐに身代金用意すれば、解放するかもね~。

アキ 何でそんな展開になるんですか!

警官A 何てことだ…。

アキ ちょっと待ってください、いきなり誘拐だなんておかしいじゃないですか!だって今会ったばかりでしかもカッターに刃はないし、第一こんな真昼間でしかも目の前に警察が…。

紗絵&警官A (アキの話をさえぎって)人質は黙ってろ!!

アキ ……(圧倒される)はい。

警官A (紗絵を指差して)で、君。要求は一体何なんだ!?

紗絵 うーんとね…税込みで…(背中のカバンから電卓を取り出し、計算)。569円。身代金。

アキ 私ってそんな価値しかないのぉ…。

警官A 面倒なことになったな…。

アキ 何言ってるんですかぁ!それくらい今すぐ払ってください!!

警官A 今、金欠なんだよ。公務員も大変なんだ。それに、財布は置いてきた。

アキ そ、そんなぁ…。私はどうなってもいいんですか!?

警官A ん?あぁ…。そうだな、本部に連絡しよう。

警官A、携帯電話(トランシーバー?)を取り出す。

警官A あ、もしもし。安藤だが。

紗絵 (何か思い出したように)え?あんどお…?

警官A (トランシーバーに向かって話す)今目の前に人質をとった刃物を持った女がいるんだ。至急応援を頼む。○○公園に来てくれ。
え…?あぁ、そうだな。おいそこの人質の君。名前は?

アキ 人質の君って…。名前は、アキですけど。

警官A 変わった名前だな。

アキ どこが?

警官A まぁいい、そっちの犯人は?

紗絵 私?私は、紗絵 門松。

警官A …え?かど…まつ…!?(突然電話を取り落とし、ショックを受けたようにその場に崩れこむ)

アキ えっ?どうかしたんですか?大丈夫ですか??

紗絵 うーん…(少し考え込んで)よしッ、今のうちに逃げよう!!

アキ あっ…。

紗絵、アキを強引に引っ張って下手へ。
警官A、少ししてから頭を抱えて立ち上がる。

上手からの声 安藤さーん、安藤さーん!!

上手から警官B登場。

警官A あぁ、ヤスか…。

警官B どうしたんですか?パトロール中に呼び出したりして。

警官A ん?あ、そうだ、誘拐事件だ!女が…。女、が…?

警官B どうしたんですか?

警官A (一瞬何かを考え込むが、振り払うように首を振る)…いや、きっと人違いだろう。とにかく、カッターナイフを持った女が身代金を要求している。

警官B で、その「女」は今どこに?

警官A まだ遠くへは、行っていないはずだ。

警官B …追わなかったんですか?

警官A まぁ、ちょっと色々あってな…。

警官B はぁ。

警官A それより、何でお前はそんなに緊迫感がないんだ!人命がかかっているんだぞ!!

警官B 人命、ねぇ…。だって今までだって安藤さんは防災訓練を本物の火事と間違えたりお年寄りに手を貸そうとした青年を誘拐だと騒いだり、誤報ばっかじゃないですか。

警官A うぅ…。とにかく、今度は本当なんだよ!

警官B はいはい、解りましたよ、探せばいいんでしょ、探せば。

警官A よし、捜索だ!

警官A&B、下手へ。
暗転。

ホリゾント先ほどと同じ、公園内の別の場所。後ろに遊具がある。
紗絵&アキ、上手から登場。

紗絵 (アキの手をとってスキップしながら)ゆーかいゆーかいー♪

アキ ちょっと!(手を振りほどく)

紗絵 なに?

アキ 貴方、何のつもりなんですか!突然誘拐なんていって連れてきたりして!警察まで来ちゃったし…。

紗絵 (楽しそうに)ゆーかいごっこ。

アキ 「ごっこ」って、刃のないカッターナイフで何ができるんですか!

紗絵 これもあるよ♪(最初のナイフを取り出す)

アキ おもちゃのナイフなんて役に立たないでしょう!全く…。はぁ…。

紗絵 (下手を見て)あっ!隠れて!

アキ えっ、えっ?

紗絵、アキの腕を引っ張って強引に遊具の後ろに隠れる(でも丸見え)。
警官A&B、下手から登場。

警官A うーん、まだ遠くへは入ってないと思うんだが…。

警官B、紗絵達を探して歩き回る。警官A、立ち止まって何かを考え込んでいる。

警官B 安藤さん、さっきからどうしたんですか?

警官A うん?…うーん…。

警官A、上の空で考え込む。しばらく間。

警官A ……なぁ、ヤス。

警官B はい?

警官A お前にさ、俺の子供のときの話、したことあったか?

警官B 突然何なんですか?

警官A いいから。答えろ。

警官B はぁ…。無い、と、思いますけど。

警官A 俺、10才のとき、ある事件に巻き込まれた事があるんだよ。

警官B といいますと?

警官A (かなり長い間。ためらうように)…誘拐されたんだ。

警官B えっ?

警官A …(一気に話す)しかも相手はまだ13歳の少女。凶器は赤いカッターナイフで、その女の名前は…。
菫・アネモフラクティスコンシトゥス・エパティークプリムラファリノサ・門松…。

衝撃音(みたいな音)。
紗絵、思わず立ち上がるが、アキが引き止める。

警官A さっきの犯人の女が、自分の名前を門松って言ったんだ…。だから、ひどく混乱して…。

警官B …あの、安藤さん。

警官A ん?

警官B もしかして、その、例の2人のうちの一人は、こーんな髪型で(手振りで示す)、赤っぽい服を着た女の子で?

警官A ああ、それが犯人だ。

警官B じゃぁ、人質の子はこんな髪型で、茶色い服を着てる子?

警官A そうだが…お前、何で知ってるんだ?

警官B だってほら、あそこに(遊具の後ろを指す)。

紗絵 やばっ、見つかったっ!!(アキと一緒におそるおそる出てくる)。

警官A (紗絵を見て)…そうだ、そうなんだよ!!

紗絵 え?

警官A やっぱりこの女…アイツにそっくりなんだ、俺を誘拐した女に…!

紗絵 ちょ…。ふざけた事いわないでよ!お姉ちゃんは誘拐なんてしないもん!

アキ (ぼそりと)妹はやってるけどね。

紗絵 私のは「ごっこ」でしょ。お姉ちゃんは、絶対誘拐なんてしない人だよお!

警官A …お前の姉が、菫だと?

紗絵 そうだよ。私のお姉ちゃんの名前は、菫・アネモフラクティスコンシトゥス・エパティークプリムラファリノサ・門松。
でも、誘拐なんてしない!

警官A ……で、そいつは今どこに?

紗絵 どこって…遠くだよ、遠く!

警官A 遠く?何を言っている!どうせ今頃は刑務所の中だろうが!

紗絵 …っ、違うよ!違うもん、お姉ちゃんは違うもん、人違いだもん!

アキ でも、紗絵…。そのカッターナイフ、お姉ちゃんと一緒に買いに行ったって…。

紗絵 そっ、それはぁ!

警官A どんなに言い訳しても無駄だろう。貴様の姉が犯罪者だと言う事実は間違いないんだ!
妹も同類だったと言う事だろう!

紗絵 違うよ、なんでそんなこと…。

警官A いいか?お前の姉が俺を誘拐したんだ!お前にわかるか?被害者の気持ちがわかるのか!10年たっても忘れられないのに!

紗絵 だから、違う!!

警官A 違わないッ!

紗絵 違う!!

警官A 違わな…

警官B、警官Aを突然後ろから殴りつける。
警官A倒れる。

紗絵&アキ え?

警官B 安藤さんは一度言い出したら聞きませんからねぇ…。
全く、本人もいないって言うのに争っても。

紗絵  そうだよぉ。(大きくうなづく)

警官B ま、これがテレビ番組なら、「さて、ここでスタジオにご本人のご登場です、拍手~」ってなるんですけどねぇ。

突然、「感動の再会」的音楽(どういう音楽だ)。
全体的に暗くなる。紗絵にスポット。

アキ えっ、えっ、嘘!?そんな、まさか本当に…ええ!?

上手の脇にスポットが当たる。
スポット、ゆっくりと、(スポットの中に人がいてその人物に当てているように)中央へ動いていく。

紗絵 …お姉ちゃん!

スポット、紗絵の隣まで来て、止まる。(もちろん中には誰もいない)
紗絵、スポットの中に向かって話しかける。

紗絵 お姉ちゃん…!会いたかった、今までどこ行ってたの?良かったぁ…。

紗絵、まるでスポットの中に人がいるように話し続けている。

アキ ちょっと…どういうこと?

警官B はぁ…。まぁこれは、つまり、見たとおりってことでしょうね。

アキ 何で?紗絵は誰と話してるの?誰もいないじゃない!

警官B もちろん、お姉さんとです。

アキ 一体…。

警官B 菫・アネモフラクティスコンシトゥス・エパティークプリムラファリノサ・門松。
この名前の頭文字を、ローマ字にして読むと?

アキ え?

警官B 菫のS。アネモフラクティスコンシトゥスのA。エパティークプリムラファリノサのE。

アキ S、A、E…。紗絵!?

警官B つまり、彼女のお姉さんは彼女自身なんです。
解離性障害とでも言うんでしょうか、ちょっと資料を見たことがありまして。
彼女のお姉さんの名前を聞いて、ふと気づいたんです。

アキ 訳がわからない!一体何なんですか!

警官B 菫さんは、13歳の時誘拐事件を起こした。
しかしその後罪の意識にさいなまれ、犯罪を犯していない、もう一人の自分、
紗絵さんを作り上げ、彼女として振舞うようになった…。そういうところでしょうか。

アキ そんな…二人は同一人物だっていうの…?

紗絵 (スポットに向かって話し続けながら)お姉ちゃん、それでね、それで。…え?何で?お姉ちゃん、待って、まだ…!

スポット、下手へ向かって動いていき、消える。
紗絵のスポットも消える。全体的に明るくなる。ホリゾント水色。

紗絵 行っちゃった…。

アキ …紗絵?

紗絵 あ、アキ!ねえ、見たでしょ、お姉ちゃん!絶対誘拐なんてしそうな人じゃないよね、ね!

アキ (無言でうつむく)

紗絵 アキ?どうしたの、ねえ、お姉ちゃんを見たでしょ?ねえってば!

アキ …紗絵、私には…。

警官B 誰にも貴方のお姉さんなんて見えませんよ。

紗絵 え…?

警官B だから、存在しないといってるんです。

紗絵、固まってアキを見つめる。アキ、反射的に目をそらす。
紗絵、下手へ走り去る。

アキ あ、ちょっと待って、紗絵!紗絵…。

警官B そう簡単には、受け入れられないでしょうね。

アキ そんな…。

警官A、起き上がる。

警官A ったく…。誰だ!上司を殴るやつは!

警官B 上司って言っても、僕の方が年上なんですよ。

警官A ええーい、現代社会は年功序列など関係ないんだヤス!

警官B 第一、僕の名前は○○○○です。ヤスなんかじゃありません!

警官A 名字の最初文字をヤ行に変えて、名前の3番目を…(わけのわからない理由を並べる)とにかく、お前はヤスなんだ!

警官B はあ…?

警官A それより、あの女、どこへ行きやがった!

アキ そっ、そうだよヤスさん、紗絵を追わないと!

警官B しかし、貴方も見たでしょう?あの状態の彼女をどうするというんですか。

アキ そんなのちゃんと話してみないとわからないでしょう!?

警官A おいおい、俺のいない間に一体何の話が進んだんだよ。

アキ (警官Aを無視)私、紗絵を追ってみます。ちゃんと本人の言葉を聞いて見ます。

警官B じゃあ、僕も行きますよ。

警官A だーかーらー、一体何の話を…。

アキ&警官B (警官Aの言葉をさえぎる)元人質は黙ってろ!!

警官A う…。

アキ じゃあ、行きましょう。

アキ、警官B、下手へ走っていく。

警官A 一体何がどうなってるんだよお…。

警官A、とぼとぼと二人の後を追う。暗転。
先ほどの場所。紗絵、下手から出てきて中央にぼんやりと立つ。

アキ、警官B、下手から出てくる。

アキ 紗絵!…紗絵。

紗絵 あッ。アキ。

アキ 紗絵…わたし…さっきは…。その…。

紗絵 どうしたの、二人とも。何か暗い顔してるよお。

アキ え?…紗絵、さっきのこと、気にしてないの?

紗絵 さっきのことって?

アキ あ…。…ごめんなさい。

紗絵 何謝ってるの?まったく、あの変なおまわりさんと何かあったのお?

警官B 気にしてないんですか?

紗絵 だーかーら、何のことなの?私全然気にしてないよ。
…でもね、アキ。それよりさあ。(アキに背を向けて、暗く言う)誘拐ごっこ、これじゃ終わりだね…。

アキ え?

紗絵 本物のお巡りさんまで来ちゃうし…。でも、わかんないなぁ。遊びなら面白いけど、実際にやって面白くなんて無いと思うよ、誘拐なんて。さっきの人を誘拐したって言う、おねえちゃんと同じ名前の人も、きっと楽しくなかったと思うな。

アキ 紗絵…。

紗絵 それにしても失礼しちゃうよ。おねえちゃんが誘拐犯だって!何で間違っている事に気づかないのかなぁ。さっきの人。

警官B …貴方自身が、菫さんでも?

アキ なっ、何てこと言うの!それはぁ、

紗絵 私が…お姉ちゃん?

アキ 紗絵ッ、だから、それは、

警官B 何故隠す必要があるのですか?彼女が気づいていないのなら、言ってあげるべきでしょう。

紗絵 私…私は…。

アキ 違うっ、そんなこといわないで!紗絵は紗絵でしょう!?

警官B どうして貴方がかばうのですか?

アキ 別に…そんな…。

紗絵 ひどい、おかしいよぉ、みんな。さっきのお巡りさんもあなたも、何か勘違いしてるよぉ…。

警官A (下手から声)勘違いなどではない!

警官A、下手から出てくる。

警官A 俺は事実を述べているだけであってなぁ。大体お前は…

アキ (大量に話し続けそうな様子なので話をさえぎる)あの…すいません。話を割るんですが。

警官A ん?

アキ えーっと、あの、(必死で話題を考える)あっ!あの、その誘拐事件の、理由は何だったんですか?犯行の動機っていうか。

警官A 動機?そんな事を俺が知るか。

アキ 知らないんですか?

警官A フン…。どうせ身代金が主な理由だろう。560万円のな。

アキ …わたしの1万倍…。うぅ。…でも、11歳の女の子がどうしてそんなお金が必要なんですか?

警官A 俺じゃなくてこいつに聞けばいいだろう!姉の起こした犯罪の動機くらいしってるだろうが。

アキ 貴方は知らないんですか?

警官A だから、身代金だろうといってるだろう!

アキ (警官Aに聞くのをあきらめて)紗絵、貴方のお姉さんはお金に困ってたの?

警官B (独り言のように)同一人物だといっているのに…。

紗絵 違うよ、お姉ちゃんは誘拐なんかしてないし、私はお姉ちゃんじゃないの。

アキ …うーん。

<!– ここから趣味に偏る。–>

警官B はぁ…。(突然、小さく笑い出す)

警官A ヤス?

警官B 全く…。いくら待っても話が進まない。僕以外の人間であっても変わらない。結局彼女は現実を見ようとしないのか…。

アキ え?…何、言ってるんですか。

警官B はは、まだ気づかないんですか?誘拐された人間と、誘拐した人間が、偶然会うなんてことがあると思ってるんですか?

アキ だって、それは演劇だからぁ、

紗絵&警官A&警官B それは禁句!

アキ はっ、しまった。ええっと、た、確かに、そういわれてみればすごい偶然だけど…。

警官B 偶然ではないんですよ。必然なんです。だって僕が考えたんですからね。

アキ 考えた?

警官B ええ。2人が…安藤さんと紗絵…いや、菫が会う方法をね。全て計画通り。いつまでたっても、彼女が昔の事を思い出さないと言う事を除けば、ね。

アキ (一歩後ろへ下がる)…ヤスさん?

警官B 僕はですね、…あの誘拐事件の共犯なんですよ。

紗絵&アキ&警官A ええ!?

ホリゾント暗い色に変わる。

警官B 正確に言えば僕は彼女…菫の幼なじみです。そして、彼女が誘拐事件を起こすようにさせたのも僕です。

アキ そんな!

警官B 彼女は小さい頃から、空想の中で妹を作っていました。彼女の頭文字をとって紗絵にするというのも、僕の提案です。彼女はいつも自分のなかの妹の話をしていた。「紗絵はね、」「紗絵がね。」いつもそればかりですよ。でも僕は彼女がままごとの一環でやっていると思っていたんです。

紗絵 私は、作られた妹なんかじゃないよ、そんなハナシ…。

警官B (紗絵を無視)…そんなある日、彼女がもう11歳になっていた時、彼女は紗絵の遊び相手がいれば良いと言ったんです。だから僕は、作られた妹、「紗絵」と同年代の子供をつれてくる事を提案した。…もちろん冗談半分でね。しかし彼女は実行した。単純に家の近くにいた男の子を連れてきたのですが、当然彼には紗絵は見えない。もちろん彼女の説明で理解できるはずも無い。ただただ、知らないところへ連れてこられた恐怖だけだったでしょう。でも菫には、それが理解できなかった。どうして彼は紗絵と遊んでくれないのか?

警官A 確かに、あの女はしきりに俺に何か聞かせていたが…。

警官B 彼女は僕に電話で聞いたんです。話を聞いてくれない理由は何か。でも僕は、「男の子を連れてきた」なんてまた彼女の空想だと思っていました。だから言ったんですよ。、「誘拐みたいだね、誘拐だったら身代金も必要だ」ってね。…まさか事実だとは思わずに。そして、彼女は僕の行ったとおり身代金を求める電話をかけた…。もちろん彼女は変声機を使ったわけでなく、公衆電話からかけたわけでもなく、友達にかけるのと同じ感覚で彼の家に電話をした。だから、すぐに見つかり、逮捕されました。僕は彼女が遠くへ行っている間、ずっと悔やんでいました。彼女の話を本気にしなかったことを。…何年もたって、彼女は帰ってきました。しかし、それは彼女ではなかったんです。僕の前に現れたのは、いつのまにか「紗絵」になってしまっていた菫だったんです。…僕は彼女に昔の事を思い出させようとしたけれど、無駄でした。彼女は「紗絵」でした。僕の事なんて、次の日にはもう会ったことさえ覚えていない。
だから、誘拐した相手に会えば思い出すかもしれないと思ったんです。でも、これも無駄だったようですね…。

アキ …ちょっと待って。安藤さんと紗絵が会うようにしたって言ったけど、私がいる事も計算していたって言うの?

警官B 貴方のような、目の前を通った人に彼女が声をかけるかもしれないとは思っていましたが、ここまで介入してくるとは思っていませんでした。でも、今回はっきりわかったのです。誰が説得しても、無駄だと言う事がね。

<!–ここから大幅変更–>

紗絵 ……っ。

紗絵、突然上手へ走りこむ。

アキ 紗絵っ!!

警官B 無駄ですよ。何度言っても、追いかけても。

アキ そんな、無駄なんかじゃ…。それに、今の話…。

アキ、突然何か考え込む。

警官A どうしたんだ?

アキ あの…。二人とも、ちょっと聞いてもらいたい事があるんですけど…。

警官A&B、話を聞くためにアキに近寄る。暗転。

紗絵、一人でベンチに座っている。
無言で手に持ったカッターナイフを見るが、すぐに降ろす。力が抜けたように、カッターを床に落とす。

紗絵、警官A&B上手から出てくる。

アキ 紗絵?大丈夫?

紗絵 何で、何でみんな変なこというの?(立ち上がる)私は紗絵だよ!紗絵・門松だよ!!

アキ そうだけど…。

警官A (紗絵の前に出てきて)お前は本当に何も知らないのか?俺の事が解らないのか?俺はお前に誘拐されて…。、

紗絵 で、でも私はお姉ちゃんじゃないし、誘拐もしてないし…。それに、今はもう誘拐されるような人じゃないでしょ?もう立派にお巡りさんで、誘拐なんてする人がいたら捕まえちゃうんでしょ?いいじゃない、今更昔の事を言っても仕方ないよ!誘拐されなかった事になるわけじゃないし。

警官A それはそうだが…。

紗絵 貴方もそうだよ(警官Bを指差す)。昔の思い出ばっか語ってさぁ、私のことをお姉ちゃんだって言いだしたのもあなたなんでしょ?

警官B 君が受け入れられなくても、事実は事実だ。それに僕はもう何度も「紗絵」としての君にあっている。それを覚えていないのか?

紗絵 確かに、なんども知らない人が会いに来たことはあるよ。でも、今は警察の人の制服着てるし、言われるまでおんなじ人だなんておもわなかったんだよお!

警官B しかし…。

紗絵 もうやめて!!助けてよお、お姉ちゃん…。

全体的に暗くなる。紗絵にスポット。
先ほどのように中に人のいないスポットが上手から動いてくる。

アキ …え?(目をこすってスポットを見る)そ、そんな…。

紗絵 お姉ちゃん!!

紗絵、人のいないスポットに向かって抱きつく(難しいな。)。

警官A …あ!?

警官B (誰もいないスポットの中を見て)あれ…すみ、れ…?

警官B、スポットに向かって近づく。

警官B そんな…、本当に、本当に…。

紗絵  ね!見えるでしょ!!お姉ちゃんはここにいるじゃない!!

アキ う、うん…(頷く)。

紗絵  (スポットに向かって)え、もう行っちゃうの?あ…うん、わかった…。あっ!

スポット消える。
全体的に元の明るさに戻る。

紗絵  行っちゃった…。

紗絵、観客席の方を呆然と見つめている。
アキ、ベンチに近づき、ポケットからカッターナイフを取り出し、紗絵に気づかれないように置く。

アキ  あっ!紗絵、コレ見て!(置いたカッターナイフを拾い上げる)

紗絵  (振り向く)これ、お姉ちゃんのみたい…。

アキ  くれたの、かなぁ?

紗絵  …うん!

警官B (ため息をついて)全く!僕のとんだ勘違いだ…。紗絵サンと菫が別人だなんてね…。

紗絵  ね!今度はみんな見たんでしょ!だから言ったんだよ。
…さて。

アキ  何?

紗絵  カッターも2本そろったことだし、アキ、もういっかい遊ぼう!

アキ  へ?何を?

紗絵  うーんとねぇ…(カッターをアキに渡しながら)じゃぁ、決闘ごっこ。

アキ  決闘ごっこお??

紗絵  (カッターをアキに向けて)さあ、勝負だ!!ちゃーんとお姉ちゃんのカッターは刃が無いし、あーんしーん♪

アキ  ちょ、ちょっと待って。そんな突然…。

紗絵  さ、やろー!!いちぞくのかたきぃ♪(笑いながらカッターでアキに切りかかる振りをする)

アキ  ひゃ、ちょっとおおおお…(紗絵に追いかけられ下手へ)。

紗絵も下手へ。
残った警官AとB、顔を見合わせる。

警官B (2人の去っていった方向を見ながら)これでよかった、のかな。

警官A あの女の姉がいる振りをしたことか?

警官B ええ。アキさんが言うのでその通りにして見ましたが…。まぁ、確かに彼女の存在を否定し続けるよりも、多少肯定してあげることも必要ですね。たとえ嘘でも。

警官A 俺には良くわからんが…。それにしても良く考えるもんだよ。カッターの事もな。

暗転。
先ほどの<!–ここから大幅変更–>の所と全く同じ様に4人が立っている。

<!–ここからは回想なので先ほどと始まりは全く同じです)

紗絵 ……っ。

紗絵、上手へ走りこむ。

アキ 紗絵っ!!

警官B 無駄ですよ。何度言っても、追いかけても。

アキ そんな、無駄なんかじゃ…。それに、今の話…。

アキ、突然何か考え込む。

警官A どうしたんだ?

アキ あの…。二人とも、ちょっと聞いてもらいたい事があるんですけど…。

警官A&B、話を聞くためにアキに近寄る。

警官B 何です?

アキ  その、私は部外者です。紗絵にも今日会ったばかりで、あまり深い事情はわかりません。でも、見てて、ちょっとどうかと思うんです。確かに、もしかして紗絵は菫サンと同一人物なのかもしれない、けど…。

警官B もしかして、ではありませんよ。

アキ  うんっ、それはわかってるんです。でも、本当のことでも…あそこまで攻め立てる事は、ないんじゃないですか。本人が嫌がっているのに何度も同じコトを聞かせて…。だから…その…。

警官A 何が言いたいんだ?

アキ  …私、少し紗絵の言う事を聞いてあげてもいいと思うんです。あの娘のことを否定するだけだと、本当の事も言わなくなっちゃうとおもうんです。だって、小さい子が悪いことをしたとき、怒りすぎるとそんなことしてないって言うでしょう?

警官B 彼女は「小さい子」じゃない。

アキ  それはそうなんですけど、でも…。紗絵は本当に子供みたいにふるまってるじゃないですか。だから、少しは認めてあげないといけないんじゃ、

警官A だから、一体俺達に何をしろと言うんだ?

アキ  何をしろっていうか…。私は、彼女がもしまたお姉さんがいるような素振りを見せたら、こちらも見えるようにふるまったらいいんじゃないかと思うんです。

警官A 見えるようなフリをする??

警官B …しかし…。

アキ  だから…お願いです。彼女のお姉さんが見えるような風に、してみてくれませんか。そしたら、紗絵も自分のことを少し認められたら、本当のこと、言ってくれるかもしれない。

警官A 俺はまぁ構わないが…。第一、俺だってさっき言ったほどあの事に固執してるわけじゃないんだ。ただ、本人を目前にするとカッとなってしまって…。つい言い過ぎてしまった。それにこんな面倒な状況だとは思っていなかったしな。だから構わないよ。ヤスは?

警官B …。もしそれを認めたら、そんなウソをついてしまったら、彼女はもう二度と自分が菫だと認めなくなるかもしれない…。そうしたら…。

アキ  紗絵はずっとウソをついてるんでしょう?自分でも気づいてないのかもしれないけど。だから、こっちも少し、ウソついてみてもいいんじゃないですか。

警官A めちゃめちゃな論理だな。

警官B ……(考え込む)。わかりました。何事も、試してみなくてはわかりませんからね。ただし、「菫のいるフリ」だけです。その他の事は、全て僕の思ったとおりのことを言わせて貰います。いいですね?

アキ  (うなづく)。ありがとうございます。私のワガママで…。
あっ!あの、安藤さん。この辺りで、コンビニか文房具屋さんありませんか?

警官A この辺り?この辺りはほとんど店がないからな…。あぁ、コンビニなら、裏道を使えば5分くらいでつくな。

アキ  その裏道、教えてください!

警官A そりゃ構わないが…どうするんだ?コンビニなんか行って?

アキ  ……カッター、買うんです。

警官A&B カッター!?

アキ  はい…あの、お願いです!早くしないと、紗絵どっか行っちゃったら困るし…。

警官A でも、カッターナイフなんてなんのために…。

警官B ―――アキさんも、考えがあってのことなのでしょう。良いじゃないですか。

警官A まぁ…いや、別にいいんだが…。

警官B どうやら、アキさんは僕よりももっと彼女の事を考えているのかもしれませんね。

アキ  えっ…。そ、そんな…。

警官B (独り言のように)僕よりも、ずっと良い影響を与えてくれるかもしれない。

警官A …ほら、それよりも裏道を聞くんだろ?

アキ  あっ、はい!

暗転。
回想前のシーンと同じ状況に戻る。警官A&B立っている。

警官A まぁ、俺はあの女がまた誘拐を起こさなければ何でもいいさ。

警官B そうですね。…安藤さん。

警官A ん?

警官B すいませんね。結局すべて、僕の個人的なことで振り回してしまったようで。

警官A いや、俺が誘拐されたのは事実なんだし、お前が仕組んだことだろうが何だろうが、俺は色々知れてよかったよ。

警官B そうですか…。(口調を変えて)…さて、そろそろパトロールに戻りましょうか。

警官A ああ、そうだな。

警官A&B、上手へ。
下手から紗絵とアキ登場。

紗絵 まてぇぇぇ~~。りょうしん(←両親)のかたきぃぃぃ~~。

アキ (紗絵に追いかけられつつ)ちょ、ちょっとぉぉぉ。

紗絵 ええい、どこまでにげるつもりだハンザイハン(←犯罪犯)!こいつがどうなってもいのかあ!!(背中のバッグからぬいぐるみをとりだしてカッターを突きつける)

アキ それじゃさっきの「ゆうかいごっこ」と同じじゃない…。

紗絵 でも、今度は紗絵が追いかけ役だよ♪

アキ そうだけど…。うーん…。(紗絵と逆の方法を向いて)これで、良かったのかな?

紗絵 一人でなにぶつぶついってんのお?(アキの顔を覗き込む)

アキ えっ?う、ううん、何でもないよ。

紗絵 じゃ、つづきぃ~♪(アキを追いかけ始める)

アキ …まぁ、いいか(苦笑)。

ほのぼの系音楽(何だそれ)。
何となく追いかけっこが続いて、幕。

【あとがきというか言い訳というか in訂正版】

回想のシーンを付け加えました。それだけです。
でも何か会話がかみあってないカンジですね…。適当になってしまった…。
まぁとりあえず矛盾はなくせたんで良しとします。では。

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